アマルフィ海岸はイタリアのソレント半島南岸に位置しており、世界一美しい海岸とも言われている。
30kmに及ぶ海岸線は断崖となっており、その斜面に張り付くように町が広がっている。最も大きな町はアマルフィであり、そのほかにもポジターノ、ラヴェッロなどの町が有名である。
アマルフィ海岸にはギリシア神話にまつわる数々の伝説が語り継がれている。
例えば、ギリシア神話のヘラクレスは愛する妖精「ニュンペー」とともに幸せに暮らしていたが、ある日突然その妖精は亡くなってしまう。嘆き悲しんだヘラクレスは世界で最も美しい場所に葬り、街を切り開いて彼女の名前をつけたとされており、それがアマルフィの街となったといわれている。
またアマルフィの西にあるポジターノには、ギリシア神話のポセイドンが妖精「パテジア」に贈ったのが名前の由来とされている。その近くのガッリ諸島には上半身が人間の女性、下半身が鳥の姿をしていたとされる怪物「セイレーン」がいたと言われている。セイレーンは美しい歌声で船人を魅了して難破させ、海に引きずり込むという言い伝えがあり、実際に多くの難破船が今も沈んでいるそうである。
アマルフィは景色こそ風光明媚な土地であるが、その暮らしは容易ではなかったようである。
近代までまともな道路がなかったため、陸路による外部へのアクセスができないことや、断崖のために栽培に十分な土地もなく、交通も不便で潮風も農耕に不利であり、時には嵐による被害を被ってしまう。こうした環境の中で、アマルフィの人々は潮風にも強いレモンやオリーブを栽培し、斜面を利用した土地利用を工夫しており、海運によって交易を行うなど、独自の文化を生み出していったようである。イスラム圏とも積極的に交易を行い、すぐれた技術を吸収していった。ヨーロッパで最初に羅針盤が導入されたのはアマルフィだといわれている。また陶器や寄木細工の技術を取り入れ、遠く中国からアラブ世界を経由して伝わった製紙技術によってアマルフィ・ペーパーを製造するなど、その先進性は枚挙に暇がない。
839年にはアマルフィは共和国として独立を宣言しており、11世紀頃には全盛期を迎えるが、14世紀に嵐による壊滅的な打撃を受け、衰退している。
天国のように美しい土地ではあるものの、その暮らしは決して容易ではなかったはずである。アマルフィ海岸はその景色の美しさもさることながら、この環境に適していった人々の生活の知恵と技術も面白い。
なお、アマルフィは織田裕ニ主演の映画「アマルフィ 女神の報酬」の舞台にもなっている。
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